Column | Interview - susuri
日常の「曖昧」な気持ちにぴたりと寄り添う柔軟な一枚
susuri デザイナー 齋藤龍也さん・齋藤あいさんインタビュー
COLUMN | 8 APR. 2019
Interview with TATSUYA SAITO, AI SAITO [ susuri designer ]

映画や物語の時代や空気に着想を得て、新たにオリジナルなイメージを紡ぐ『susuri』。その服は、夫婦である齋藤龍也さんとあいさん、2人の手から生まれている。

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「僕が絵型(デザインを基に、洋服を平面図に分かりやすく書き起こしたもの)を起こし、生地選びまでを行います。その後、袖のふくらみはこうかな、とか細かなディテールを2人で詰めていく感じですね。男性の僕から見た女性らしさは、どこかファンタジーになりがちなんです。でも、女性の立ち位置からも見てもらうことでリアルさが加わる。夫婦だから、あうんの呼吸で進められる反面、やっぱり視点は違います。ひとつのデザインを2人の目で、別の角度から見られるというのは、服をつくるうえでの良い作用ですね」

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どこか懐かしさと暖かさが立ちのぼる、『susuri』の2018年秋冬コレクション。 「ロシア人の監督による『ノスタルジア』という映画をイメージソースに生まれました。繊細な美しさとノスタルジックな空気が流れる作品なんです。柄にちょっとダークな色を使ったり、民族衣装のエッセンスを交えながら、ロシアや東欧の素朴なテイストを加えていきました」

日本の職人が支える、物語の背景

そのひとつが、毎シーズン展開している『susuri』の定番でもある、ブロード素材のヘムレンシャツワンピース。今回選んだ、もやがかかったようなグリーンは、映画の世界の森や霧をイメージしている。色の要は、生地にしっとりとした表情を添える風合い。これは生地を織り上げてから染める“後染め”によるものだ。

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中央がヘムレンシャツワンピース。左はジャニターブラウス。実のある植物を描いた古い図案をもとに、シーズンテーマに合わせてダークなトーンでまとめた。右はヤクとウールリネンのチャプレンコートで、ダブル仕立てのメンズライクなニュアンスをレディースに落とし込んでいる

「江戸時代から続いていると言われる鉄釜で、ゆっくりと染めています。時間はかかりますが、ふんわりとナチュラルな色合いに染まるのが特徴なんです」。 フロントから見るとシンプルなシャツワンピースだが、バックスタイルは、おしりにかけて少し膨らみをもたせたデザインに。ここにも2人のこだわりがあった。

「前後や左右でバランスや印象を変えるなど、相反する要素を少しのぞかせるのが好きですね。男性にも女性らしさはあるし、反対の女性にも、かっこいい一面があったりする。メンズ・レディースという垣根や、“これ”と決めこんだテイストではなく、曖昧なアンバランスさをどこかに残したいのかもしれません」

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一枚の服が、小さな旅へといざなってくれる

デザイナーの龍也さんと話していると、「曖昧」というワードがたびたび出てくることに気づく。そしてそれは、ネガティブな意味での曖昧さでは決してない。 「自分の中でも、欲しいものや、したいことは、そのつど変化します。それが日常だし、服に対してもそんなふうに向き合ってきました。コスチュームの緊張感が心地いいときもあれば、日常着のリラックス感がほしいときもある。でも、そのどちらでもない曖昧な気分もたくさんあると思うんです」

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暮らしの中で、人は笑ったり怒ったり、恥じらったり、自信に満ちて胸を張ってみたりする。日常と非日常は白黒はっきりしないもの。それと同じように、気持ちだってグラデーションがあるからこそ、人はチャーミングだし、人生は豊かになる。

『susuri』とは、エスペラント語の“さらさら流れる”に由来するという。『susuri』の服は、いつでも同じ顔にとどまらない。よどみなく流れ、軽やかに形を変えることで、着る人の曖昧な気持ちやシーンにぴたりと寄り添ってくれるのだ。

「着るだけで、ちょっとだけ気分があがる。嬉しい気持ちになったり、何かを一歩踏み出そうと思えたり。生活の中での気持ちの変化は、どこか小さな旅にも似ています。旅のような日々に重なることができる……自分たちの服が、そんな存在であれたらいいですね」

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日常は、羞じらいや緊張、可笑しさや軋みなど曖昧な気分を見つける小さな旅の繰り返し。

そんな不確かで不均等な日々の気分を男らしい、女らしい、という感覚に捕われず時代や物語のイメージを重ねて衣服として表現している。

http://www.susuri.com/

writer | AKARI FUJISAWA
photographer | MASAKI FUJIMURA

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